理学療法

呼吸理学療法(リハビリテーション)について

 呼吸理学療法(リラクセーション、呼吸訓練、呼吸筋トレーニング、胸郭可動域訓練、排痰法、運動療法)は在宅酸素療法、薬物療法とともに慢性呼吸不全の方にとって重要な治療の一つです。この包括的な呼吸リハビリテーションを行うことにより症状の緩和が期待できます。

リラクゼーション

肺の膨張によって緊張し続けている呼吸補助筋の緊張を緩めて、リラックスさせます。

●座位での息切れ軽減姿勢

イスに座って、体を前かがみにすると、腹部の臓器が横隔膜を押し上げ、呼吸が楽になります。

呼吸法

 おなかが膨らむように意識しながら鼻で息を吸い込む「腹式呼吸」を心がけます。息を吐くときは、ゆっくりと吐ききる「口すぼめ呼吸」にします。

口すぼめ呼吸の練習

1)口を閉じて鼻で息を吸い込む。

2)口を楽な状態のまますぼめ、ゆっくりと吐き出す。

3)吐く息は吸う息の2倍時間をかけます。

4)吸うときに1,2と数え吐くときに同じテンポで1,2,3,4と数えながら行うとよいでしょう。

腹式呼吸の練習

1)あおむけに寝て、手のひらを胸とお腹にのせます。

2)息を十分吐き出して口を閉じ、鼻から深く吸って、お腹が盛り上がってくるように膨らませます。お腹にのせた手を上に押し上げるように意識するといいでしょう。このとき、胸の上の手があまり動かないことを確認しましょう。

3)口をすぼめてゆっくり息を吐き出し、お腹をへこまします。このときも胸は大きくは動かさないようにします。

基本練習ができたら、いろいろな姿勢での腹式呼吸の練習をしましょう。

動作時の呼吸の基本は次の通りです。

1)力のいる動作の前に腹式呼吸で大きく息を吸う。

2)口すぼめで息を吐く間に動作を行う。

3)息を吐くときは、吸うときの2倍以上の時間をかける。

痰の出し方

 痰がからんで、うまく出せないと、呼吸の妨げになります。速やかに取り除くようにしましょう。

●痰の性質を変える

・去痰剤、ネブライザーでの吸入、水分の摂取など。


●振動を与える

・手のひらをおわんの形にして、胸や背中をパカパカとたたきます。これをタッピングといい、一番基本的な方法です。自分でするのは難しいので、ご家族に手伝ってもらいましょう。単に叩くだけでは効果的ではありませんので、医師・看護婦・理学療法士から叩き方のコツを教わってください。電気マッサージ器などを胸や背中に当ててもいいでしょう。

●体を動かす

・痰をより出しやすくするために、体を前後・左右に傾けたり、あおむけやうつ伏せを繰り返したり、横になって右向き・左向きを繰り返したりします。

・枕やふとんを使って以下のような姿勢をしばらく保っても、痰がでやすくなります。


●体位ドレナージ法

・痰のたまっている場所が口より高い位置になるような姿勢をとります。次に振動を与え、その後、咳をして痰を出します。どんな姿勢が良いかは患者さんによって違いますので、医師と相談してください。ご家庭では、振動を与えるのにご家族の協力が必要です。もし、その姿勢で苦しさが増す場合には中止してください。

全身の筋力強化(運動療法)

 慢性呼吸不全の患者さんは、体を動かすと呼吸が苦しくなるため、日常生活が消極的になる傾向がありますが、下肢をはじめ、全身の筋力を高めることがクオリティ・オブ・ライフ(生活の質)をよくすることがわかっています。医師と相談しながら、ウォーキングなどを積極的に取り入れるようにしましょう。毎日少しずつでも運動をして、体調を整え次第に体力をつけていくことを心がけてください。運動を続ければ、食欲増進、不眠解消、気分転換、ストレス解消などの効果も期待できます。

[PR]動画